子供の頃、ずっと一緒にいた犬を思いだした。
白くて小さくてフワフワしていて、ゼラチン質の肉の繊維が絡まったような缶詰が
好きだった。その缶詰は値段も高かった。
ある日、私の使うシャンプーが空になっていて母にシャンプーない?
と文句半分言うと「モノゲンユニで洗いなさい」と言い返してくるくせに、犬の缶詰と犬用シャンプー
は、在庫をきらしたことがなかった。私の妹のような存在の犬だった。
ある日、その妹のような犬は、動かなくなっていた。私も随分と大きくなり、長く一緒にいた
が、妹は、私よりも先に年をとりそして、おばあちゃんになって旅立った。
先程まで動いていたのに、生と死の境目の線が確実にそこにはあった。
2度目の死を体験した。
『きみと風』は、犬と暮らした人には、泣かずにはいられない物語であると思う。
最後のページの木下龍也さんの短歌にやられてしまった。