「ハーレム位牌って知ってる?先妻 父 後妻 三人を1本の位牌に彫るんだよ。」
素敵だな、ハーレム位牌。きっとお父様は先妻さん、後妻さんを大事にしていたのでしょうね。
私もいつか、父の呪いのハーレム位牌を作りたいなと思っていたのだが…。
私が、20代中盤で一人暮らしをはじめたのを契機に父と母は、離婚させられた。
二人に離婚の意思があったのかなかったのかは、どうでもいい。母方の伯母が厳格
な人で、今までの父の所業を許せなかったらしい。「うちの妹をよくも」ってね。
それで父は、はれて自由の身となり、どこかの女性のもとに去った。母は、ひとり暮らしとなった。
私も一人暮らしをはじめたので、それを機に父とは絶縁した。
今までの復讐劇のはじまりである。私がファザコンなのも父の愛を求めてのことである。
こんなエキセントリックな人格になったのも父のせい、恐れ回避型で人間関係の構築が
おかしいのも父のせい、私がブスなのも父がブスな嫁と結婚したせい、
父の色白のハンサム遺伝子をもらえれば、人生好転していたかもしれない。
携帯電話の番号も変更し、父の連絡先も消した。だから、私がどこで
何をして、どうなったのか父は知らない、それでいい。ライフイベント
私の結婚も色白の男児の出産も母の死も父は知らない。
父が再婚でもしてくれたら、万々歳だ。すべてその女性に父のことをおまかせしたい。
実家の墓にも入れてやらない。父と母が離婚したの
ち母と私でお金を出して父方の祖父が建てた墓の修繕をした。本家に父は不在ですが、母と私で修繕
しました。つきましては、母は離縁しておりますが、こちらの墓に入りたいと申しておりますので、
入れさせていただきますと筋を通した。父は、どこぞの再婚相手の家の墓でもいれてもらえばいいと
思った。数十年後、兄のところに連絡が入った。父が死んだらしいと。私は落胆した。再婚してな
いなと思った。子供に連絡がくるのはそういうことであると理解した。
隣接市の市民病院で亡くなり、病院から至近にある大手葬儀社が父の躯を預かってくれている
とのことで葬儀社に向かった。何十年かぶりの再会である。
病院に確認すると、女性がずっと付き添っていたそうである。事実婚らしかった。籍をいれてくれれば
いいのにと思ったが、父は再婚しなかった。多分、私たち子供の性格をわかっていたのだと思う。
結局、その大手葬儀社にお世話になり葬儀をあげ、実家の墓に入れることになった。
やっと父が私たちの元に戻ってきた。
父の体躯は、むかしよりも小さくなり、それでも皺が刻まれた顔立ちはハンサムであった。
おかえりお父さん