洋服にしても物にしても欲しいものが手に入らないのは苦しい。
売り切れてしまい手に入らなかったものが数多ある。
忘却していくものもあれば、執着して探しまくったものもある。
今、私が欲しているのは、バタイユだ。バタイユは野良の猫なんだ。それも夜になると
我が家の庭に現れる徘徊猫。見つけると駆け寄って背中を撫でている。
抱きしめグリグリしたいって思うのだけど、それをやると自分の想いが暴走するのがわかって
いるので我慢している。気持ちが抑えられなくなる。
いつかバタイユをギュッって、できる日がくるといいなと思うのだが、その頃には、
バタイユも私の前に現れてくるのか、くれないのか。もう、バタイユには会いませ
ん。夜になってもバタイユの気配を感じても駆け寄るもんか、なんて思って見たりもするのだが、
やっぱり逢いたい、顔をみたい。この間は、私の腕にある赤紫の大きな痣をみつけて心配そうにバタイユは痣を嘗めてくれた。君が人間ならば、きっとこういうだろうね。
バタイユ「何があったの」
私「転んだの」
バタイユ「本当に嘘ついてない」
って君は優しいから心配してくれることだろうね。
バタイユが恋して、他の猫と戯れていても、私は何も言えないんだよ。そっと見守っているだけなんだ。君に自分の気持ちを伝えることもできない。ただただ傍観しているだけなんだ。今の私は君を養えないから。もっと、強くなって、自分で稼げるようになったら、君を迎え入れるよ。あと、幾年か待っておくれ。君の死に水は私がとりたいと思うよ。それまで元気にいつものとおり私の前に現れておくれ。君が背中を投げ出して横たわるかぎり、君の背中をずっと撫で続ける。
約束する。