色白反町似だった父は、霊感があった。彼女はいたけど、くそ真面目であった。冗句も言わない人だった。そんな父が、ある時、お盆の時節に家族で夕食をとっていると、父が座っている斜め前の椅子をさして「おばあさんが来ている」と真顔で言ったことがあった。それは、亡くなった母方のおばあちゃんであったらしい。小学生の頃にお盆には先祖が戻ってくるのだなと思った。
その他にも、某山に観光に行った際に、父が遠くをみて、バスがくるから危ないから下がりなさい。というのだが、バスなどおりてこなかった。
高校生の頃にも、通学途中の川沿いで何やらみたりとか、聞けばいろいろとあったようだ。本人はそれが普通なので、たいして気にしていない風であった。神主家系なので、そういうものなのであろうと思っている。
もうすぐ、お盆、父もうちに来るかなと思って、酒が飲めない父は、甘いものが大好きであった。父のためにもチョコレートでも買ってお供えしようかと思う。
今も家族の幸せな記憶の記号である常磐ハワイアンセンターには行けない。浅間山の某観光地にも行けない。
黒いセドリックの斜め後ろの席から、ヘビースモーカーだった父は、峰を片手に運転していた。その横顔は仕草は、心底恰好よかった。それ以上の男性に私は出会うことはない。
私は、父が憎くて、父が恋しい