中川の仏壇 ハムカツとMちゃん - 中川の仏壇
ブログ モダンミニ仏壇

2024.8.14

ハムカツとMちゃん

幼稚園のころの幼馴染のMちゃん家の記憶である。

Mちゃんの家は、国道沿いから車で入ることができない。人がやっと通れるくらいの

森のトンネルが国道からMちゃん家に通じる入口である。

杉の森を切り開いて人が日々通ることで道ができている。おそらく3か月も人が通らなければ道はなくな

るであろう。私は、Mちゃんに行くときはこの森のトンネルを抜けて行く。途中、植生がかわり杉から

松林になる。そして急な坂をくだった先は一面田んぼになる。田んぼの細い畔を通り抜けると

その次に3ⅿ幅のきれいな水が流れている川がある。その川の橋をわたると築100年超えの土間と囲

炉裏がある古民家の家がMちゃん家だ。屋根は、現代風に吹き替えているが、中は、当時の間取りをそのままつかっていた。

自宅には、井戸が数本掘ってあり、炊事場、風呂場は井戸水をつかっていた。夏はひゃーと声が出るほ

ど冷たく、冬はちょっとだけ温かい。風呂桶も檜材の楕円形風呂で、この風呂桶が心底うらやまし

かった。薪で風呂を沸かしているので井戸水、薪の熱、すべてが体に優しい。

Mちゃん家には、練炭の掘りごたつがあった。「こたつの中にもぐりこまないで」とMちゃんに注意さ

れた記憶がある。その当時は意味がわからなかったが、・・・・・そういうことらしい。

Mちゃん家のお母さんは、日曜日などお仕事で出かけてしまう時には、手作りのおかずを

用意していた。私が遊びに行った日のお昼のおかずは、手作りのハムカツと自家栽培の

野菜炒めであった。白い皿にきれいに盛って、ラップがかけてあった。

Mちゃんは、昼になると冷蔵庫からだして、朝の残りの味噌汁と釜に入っているご飯を盛り一人で食事

をしていた。私は、Mちゃんが食事が終わるまで待っていた記憶がある。

私の家では、そういった母の優しさがなかったので、ハムカツをみるとこの

Mちゃん家のお母さんの優しさを思い出してしまう。

母親が、ハムカツをつくることは、普通のことであると思うが、私の母は、こ

の普通がなかったように思う。贅沢はしなくてもよいのだ、外食とか、そういうことじゃなくて、手作

りのハムカツを親が準備してくれる、それがとてもとうとい。

大人になったMちゃんは、きっと家族の誰かのためにハムカツをつくっているであろう。

ハムカツをみると、胸が締め付けられるような幸せなような、気持ちになる。

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